2009年10月17日 M5エキマニの補修


【はじめに】

今回も小僧のものではなく、E34 M5にお乗りで東京にお住まいのchachaさんから修理の依頼を受けて行ったものである。
品物は、M5エンジン用の等長エキゾーストマニホールドである。さすがM5だけあって、ステンレスの立派なものだ。

 

【エキマニの状態】


お布施と一緒に送られてきた。(笑)


送られてきたエキマニ。


エンジンの前側3気筒分です。

漏れがあるので、それを必死で防いだ形跡がある。


漏れ止めのため、金属パテ+バンテージ+鉄板を巻いてある。


洩れ箇所を見るため全てを剥がす。


矢印の蛇腹の奥が3/4周ほど割れている。

今回の修正方法については、当初は割れの部分を溶接で補修するよていだったが、この場所では不可能なので蛇腹の山の部分を溶接で埋める方向で考えていた。しかしそこで溶接してもすぐに横から割れが発生する可能性が大のため別の方法をとることにした。

何度かTELやメールでのやり取りや他の方からの助言で、蛇腹の撤去移設の方法に決定した。


【浸透探傷検査】

補修に取り掛かる前に、他の部分に割れなどが無いか検査することにした。


検査方法はPT検査(浸透探傷検査)で、非破壊検査の一種で品物を破壊することなく欠陥を見つけ出す方法である。

画像にある3本のスプレーを使う。


赤色浸透液を傷の中に染込ませ、その上に白色現像液をかけることによって浸透液を染み出させて、傷の場所を特定する検査である。


まず、表面の汚れや油脂類を洗浄液で綺麗にする。




洗浄液


表面が綺麗になってよく乾いたら浸透液を満遍なくスプレーする。




赤色浸透液

満遍なくスプレーするために吊るして作業。


この赤色が傷などに染込ますため10〜20分程度待つ。


時間が着たら表面の余分な浸透液を綺麗にふき取る。




洗浄液

この洗浄は入念に行うこと。また、必ずウエスなどに洗浄液を染込ませてふき取るようにする。
なぜかと言うと、直接品物にスプレーすると折角傷の中に入った浸透液まで取ってしまうからである。


綺麗になったら現像液を満遍なくスプレーする。




白色現像液

 

エンジン排気ポート部。

 

ノズル部分。 


集合部分。


特に割れなどの異常はないようである。

ちなみに、画像の中で赤い部分は傷ではなく、サビや汚れに染込んだ浸透液が出てきたものである。


【エキマニの補修】

検査も無事に終わったので早速補修に取り掛かる。


蛇腹部分を固定する。

蛇腹が固定出来たら、続いて本体を固定する。


定番の上に冶具を溶接してエキマニを固定する。

本体がしっかり固定できたら、先ほど固定した蛇腹部をカットしていく。


蛇腹の中のパイプを傷つけないように慎重に少しずつ切取っていく。


蛇腹のみが取れてむき出しになったパイプ。


ここで、構造を簡単に説明しておく。

赤い線で書いたのがパイプの位置である。



蛇腹のなかはパイプが重なって配置されており、蛇腹部分の編流による排気抵抗をなくす工夫がしてある。


錆や汚れを綺麗にして、溶接で仮止めをする。

もう少し仮止めを増やしてから、冶具から外し本溶接にをする。


溶接中。


溶接が終了。


内側の様子。


灰色になっているところが溶接箇所である。


蛇腹がついていた溶接部分をグラインダーで削り取る。


完成である。


【仕上げ】

そのまま送るのもつまらないので、サービスで酸洗処理をしてみた。


ステンレスの酸洗用の薬剤の中に浸けて小一時間放置。

長さが長いので2回に分けて浸け置き。


薬剤を水で綺麗洗い流して乾燥。

   

悲しいかな、純ステンレス(いわゆる18−8ステンレス)ではないので、すぐに錆が発生する。


新品になった。



chachaさんは喜んでくれるでしょうか〜(^o^;
(劇的ビフォーアフター風に)

今回の補修では、蛇腹の内部が良い構造になっていたので簡単に補修することが出来た。

これを送り返したら次の部分が送られてくる。次は外した蛇腹の移設になる。

続く。。。。


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