2012年3月4日 デフファイナルギヤの交換2(組立編)


【はじめに】

分解が終わって部品待ちの状態だったが、ようやく部品が入荷したので組立に取り掛かる。

識者の方に教えてもらったり、色んな資料を見て勉強した。(このレポートに出てくる数値はMサイズデフものです。)


【デフの組立】


こちらが今回のために手配したデフの部品。(^o^)b


各部の調整用のシムのセット。


どれがどの厚さか分からないので事前に計測して記入。


新しいベアリングの組み込みから始める。


ピニオンギヤにテーパローラーベアリングのインナーを圧入する。


事前に製作しておいた冶具を使ってプレスで作業。


さすがはプレス簡単に入っていく。


アウターレースの組み込み。


冶具を使って圧入する。


ピニオンの高さ調整用のシム。


とりあえず分かりやすい3.50を組み込む。


シムの上にアウターレースをセットする。


冶具で圧入する。


真っ直ぐに入るように注意しながら入れる。


ピニオンギヤの組み込み。


ピニオンにベアリングを入れるのでピニオンで受けるようにセットする。


これでケースはフリーになっている。


ベアリングインナーレースをセットする。


冶具で圧入していく。


これはベアリングのガタがなくなる程度でOK。

入れ過ぎに注意。


インプットフランジをセットする。


ロックナットを取り付ける。


ロックナットは後ほどキチンと締めるので、今は軽く締めておく。


サイドカバーのベアリングアウターレースをセットする。


冶具を使って圧入する。


LSDにリングギヤを焼き嵌めする。


リングギヤを80〜100度に温める。


注意、100度以上にはしないこと。


全体的に90度ほどになったらOK。


素早くLSDにはめ込む。


ボルト位置がずれないように位置決めピンをセットして穴と合わせる。



動かさないようにして、完全に冷めるのを待つ。

冷めたら抜けないようにボルトで仮に固定しておく。


LSDにベアリングインナーレースをセットする。


冶具で圧入する。

以上で、ベアリングの組み込みは終了である。ここから各部の調整作業に取り掛かる。


ピニオンギヤの調整をする。


ロックナットの締め付け。

トルクレンチを使って徐々に締め付けていく。


一度締めるたびにフリクショントルクを測定する。
調整時は、2.0〜2.5Nmにする。


フリクショントルクとは?
 訳すと摩擦トルク。
 ベアリングがしっかりと回転するのに必要なトルクである。
 ベアリングによって適正値が決まっている。

測定方法。
 回転始め(起動時)のトルクではなく、回転中のトルクを測る。
 1分間に50回転ぐらいで回しているときの数値を読み取る。


ピニオンギヤの測定のために作った測冶具。


ダイヤルゲージをセットする。


ゲージの突き出し量を2mmにセットしてゼロ点を合わせる。


デフケースにセットする。


下側の丸いものは、基準のゲージで厚さ9.5mmである。


一度持ち上げてダイヤルの針の動きを読み取る。


画像の場合、ゼロ点の3目盛手前になっている。
1回転と3目盛手前と言うことで、

3目盛分(0.03mm)なので、2−0.03=1.97mmとなる。

ただ、場所によっては1.98mmの所もあった。


各ギヤごとに決まっている数値で、ピニオンに刻印してある。

このギヤの場合−1(マイナス1)と書いてある。

この数値は1/100mmを示しているので−0.01mmとなる。


この数値を基準寸法と合わせて考えるのだ。


調整シムの交換のためピニオンギヤを抜き取る。


ベアリングアウターレースと一緒に抜き取る。


この調整のために作った計算書。


これが無いと足し引きがややこしくて間違う可能性がある。

PDFファイル


これに測定した数値を書き込んで計算する。


計算の結果、使用するシムは3.485mmとなった。


購入したセットの中には3.485mmは入ってなかった。


近い3.475mmと3.495mmの2つがあった。


測定差の0.01mmを考慮して、3.495mmを使うことにする。


もう一度組み立ててフリクショントルクを調整する。


ダイヤルが0〜0.01mmになった。


と言うことは、基準値の11.49〜11.5mmとなる。


これでピニオンギヤは確定したので、一旦抜き取る。

ここで、LSDの組立に移る。


先に焼き嵌めしたシングギヤを固定する。

かなりのトルクを掛けるので組立前に行う。


ネジは必ず新品でネジロックを塗布して締め付ける。

ネジロックは高強度のものを使用。


まずはトルクレンチで100Nmで締め付け。


もちろん対角線順に。(^o^)b


続いて角度締め、50度で締め付ける。


リングギヤが締まったらLSDの組立。


組立にはLSD用のオイルを使う。


パーツにタップリとオイルを塗って順番通りに組んでいく。


一番奥のプレートに磨耗による段差があるので裏返しで組む。


この磨耗があるとイニシャルが低下する。


ちなみにこのプレートの厚さを変更することによってトルクを変えられる。


順番を間違わないように。


ギヤにもたっぷりとオイルを塗る。


小ギヤの組み付け。


ネジ穴にオイルが入らないように注意する。


最後に蓋をしてネジ止め。


ネジロックを塗布する。
 


ここは、33Nmで締め付け。


この締め付けによってイニシャルトルクが発生する。


組みあがったら、イニシャルトルク(スリップトルク)の測定。


規定値は50〜75Nmである。


測定値は650kg・cm=63.7Nm。


まずは、問題のない数値だ。(^o^)b


LSDをデフケースに組み込む。


ベアリングにしっかりとオイルを塗って組み付ける。


サイドカバーを規定トルクで締め付け。


締め付けトルク22Nm。


リングギヤ側のフリクショントルクの測定。


規定値は1〜2Nm。(SKF)


元々入っていたシムで組んだが0.5Nmと低い数値だった。


シムの厚さを換えてみる。


上側が元々入っていたシム。


右がギヤ側だ。



事前に組んだときにバックラッシュも計っておいた。

そのときは0.15〜0.16mmあったのでその分を考慮に入れる。

(ちなみにシム0.01mmで、バックラッシュ0.0076mm移動する。)


シムを入替えて再度測定。


1Nmまだ低い。


これを繰り返すこと3回、ようやく規定値になった。

決定値1.8Nm。


これが最終のシム厚さ。


ちなみに左右が逆になっている。

ギヤ側が1.61mm


ピニオンギヤにクランプカラーを入れて組み立て。


このカラーをベアリングの間に挟んで潰すことによってフリクショントルクを維持する。


インプットフランジにダストカバーを取り付ける。


インプットフランジのシールをセットする。


インプットフランジを取り付ける。


カラーを潰しながら締めるので強いトルクが必要。


最終の締め付けなのでトルクを測りながら慎重に締め付ける。

Mサイズデフの場合は、1.3〜2.5Nm。(SKF)


クランプカラーは一度潰れると再使用出来ないので、締め過ぎに注意。

新しいシールを入れると、トルクを0.2Nm増やす必要がある。


決定値2.2Nm。


LSDにスピードセンサーの羽根を取り付ける。


歪めない様に冶具で挿入。


ケースに組み込んでバックラッシュの確認。

規定値は0.06〜0.14mm。



計算通り0.08〜0.1mmになっていた。

ちなみにバックラッシュはオイルのない状態で計測する。
(オイルがあるとギヤが張り付いて計測できない。)


バックラッシュが決まったので、ギヤの歯当たりを見る。


擦り合わせなどに使う、光明丹をオイルで溶いて使う。


出来るだけ薄く満遍なく塗るのがコツ。


オイルで溶いているので乾くことはない。


ギヤをゆっくりと回転させて光明丹が擦れるようにする。


どちらにも回転して当たりを確認する。


前進方向に回転したときの当たり。


歯の全面に綺麗に当たっている。


画像では中央付近だけに見えるが、こちらも全面に当たっていた。


光明丹はオイルで溶いているので問題ないが一応綺麗に落としておく。


ギヤの調整も終わったのでサイドカバーを正式に組み付ける。


カバーを外してシャフトシール取り付ける。


打ち込み冶具で規定位置まで挿入する。


O−リングにオイルを塗ってカバー外周の溝にはめる。


アウトプットフランジにダストカバーを付ける。
 


冶具で均等に打ち込んでいく。


ケースの穴にもオイルを塗ってカバーを取り付ける。

カバーには向きがあるので注意する。

外周にツバがあるほうが上向き。



この2箇所のボルトだけシール材を塗布して締め付ける。


デフ玉取り出しのためケースが薄くなって穴が貫通している為だ。


ボルトにたっぷりとシール材を塗る。


ケースにねじ込む。


カバーを規定のトルクで締め付ける。


規定値22Nm。


アウトプットシャフトのロックリングを取り付ける。


LSDの内部の穴の溝にセットする。


シャフトとシールにオイルを塗って、アウトプットフランジを挿入する。


奥までしっかりとはめる。


この状態で総合フリクショントルクを測ると、3Nmだった。

規定値は1.8〜3.2Nm。


ドレンプラグとブリードプラグ。


手前が新品でO−リングが付いてアルミワッシャーが不要になっている。


ドレンプラグの取り付け


ブリードプラグの取り付け。


スピードセンサーの取り付け。


新しいO−リングを入れて取り付ける。


2本のネジで固定する。


ケースリアカバーの取り付け。


フランジ面をよく脱脂しておく。


液体パッキンを満遍なく塗りつける。


ガスケットを貼り付ける。


カバー側にも液体パッキンを塗って合わせる。


ボルトを規定トルクで締め付ける。


規定値45Nm。


最後にインプットシャフトのロックナットの回り止めをする。


ロックプレートを打ち込んで完成。


これで組立は全て終了だ。


折角なので外観も綺麗にする。


ブラックで塗装する。


後は、車体に搭載するのを待つだけだ。

長らくお待たせいたしました。m(_ _)m とりあえずマニュアル通りに組んだので間違いは無いと思います。

ただ、あくまでも素人の組立ですので保障は出来ません。(^o^;

それから、くれぐれも良い子は真似しないように。(^o^)b


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